1月11日に発表された新型ウォークマンのA300シリーズとZX707ですが、前作のA100シリーズやZX507と比べて搭載されたSoCが大幅に進化していることが分かりました。
モデル別SoC/GPU/RAM比較表
新発売のA300/ZX707と前世代のA100/ZX507、そして前世代のWM1A/1Zと同じSoCを搭載しているWM1AM2/ZM2(2021年3月発売)の比較表です。
モデル | A300 | ZX707 | A100/ZX507 | WM1AM2/ZM2 |
チップ名 | QCS2290 | QCS4290 | i.MX 8M Mini | i.MX 8M Plus |
CPU | ARM Cortex-A53 | Kryo260 | ARM Cortex-A53 | ARM Cortex-A53 |
コア数 | 4 | 8 | 4 | 4 |
動作周波数 | 0.3~2.02GHz | 0.3~2.02GHz | 1.2~1.8GHz | 1.2~1.8GHz |
プロセスルール | 11nm | 11nm | 14nm | 14nm |
メーカー | Qualcomm | Qualcomm | NXP | NXP |
GPU名 | Adreno702 | Adreno610 | GC7000nanoUltra | GC7000nanoUltra |
RAM | 4GB | 4GB | 4GB | 4GB |
過去に発売されたAndroidウォークマンと搭載されているSoCの毛色が全く違うことが見て取れます。従来はNXP社のSoCが採用されていましたが、今回からはスマホなどで馴染みのあるクアルコム社製に変更されています。QCSシリーズは産業用途のSoCで、低消費電力だそうです。
昨年発売されたばかりのフラグシップモデルではSoCが据え置かれているため、A300/ZX707のSoCが更新されたことはビッグニュースでしょう。
Antutu/Geekbenchベンチマーク結果
報告されたAntutu v9ベンチマーク結果です。端数を丸めています。
モデル | A300 | ZX707 | A100/ZX507 | WM1AM2/ZM2 |
CPU | 29,000 | 62,000 | 28,000 | 27,000 |
GPU | 12,000 | 33,000 | – | 2,900 |
総合 | 107,000 | 185,000 | ※70,000 | 91,000 |
※A100/ZX507は3Dのベンチマークが起動不能とのことで総合スコアは参考値です。
続いてGeekbench5のベンチマーク結果です。
モデル | A300 | ZX707 | A100/ZX507 | WM1AM2/ZM2 |
シングルコア | 161 | 310 | 152 | 150 |
マルチコア | 552 | 1302 | 500 | 478 |
ZX707がAntutu・Geekbenchともに突出して高スコアを叩き出しています。ZX707に搭載されたQCS4290はスマホ向けであるSnapdragon665と同等のスペックとみられます。
一方のA300シリーズはCPU性能こそ微増にとどまっているものの、AntutuのGPUスコアがWM1M2シリーズと比べて4倍以上伸びています。A100シリーズはWM1M2シリーズと同じSoCなので、同様の結果となりそうです。
前世代の問題点が解消されるか?
前世代の問題点はSoC由来のバッテリー持ちの悪さです。
前世代に搭載されているi.MX 8M Miniは動作周波数が1.2GHzからとなっています。通常、低負荷時は動作クロックを下げることで電力消費を抑えるといったコントロールがされますが、このSoCは何の操作もしていないアイドル時でも1.2GHzでSoCが駆動していることになります。A100やZX507は何もしていなくてもどんどん充電が減るとの報告が多く、こうした動作クロックの下限が高いことが影響していると考えられます。こうした問題に対し、同じSoCを搭載しているWM1AM2/ZM2は単純にバッテリー容量を増やすことで駆動時間を稼いでいます。
しかし、今回発売されたA300/ZX707はともに動作周波数が300MHzからとなっており、前作で採用されていたi.MX 8M Miniと比べて下限が4分の1に抑えられています。アイドル時のに消費電力をより賢く抑えられるようになっています。また、開発者インタビューの記事によると、今作では低消費電力のSoCを搭載したとのここと。メーカー公称のバッテリー連続再生時間はZX707が5時間の伸び、A300は16時間以上伸ばしていますから、バッテリー持ちは改善しているとみて良さそうです。連続再生時間+アイドル時の電力消費の改善により、体感のバッテリー持ちはかなり良くなることが期待できます。同インタビューではバッテリー容量は前作と同じであると明言されているため、SoCの変更による恩恵は大きいのではないでしょうか。